2020.6.17

★Uncle Myke’s letter★

求む、IT人材

求む、IT人材

IT企業のオフィス(シリコンバレー)

【著者】山谷正己(Myke):米国Just Skill, Inc.社⾧。日本アイビーエムを経て、米国IBM、米国Amdahl にて仮想計算機(VM)の開発に従事。その後、独立して同社を設立。最新IT ビジネスの調査・コンサルティング、トレーニングに専念。シリコンバレー在住。

日本は資源少国

日本は国土が狭いうえに平地が少ないため、耕作面積が限られています。佐渡の金山にしても、北海道、九州の炭鉱にしても、とっくの昔に掘りつくして枯渇してしまいました。したがって12千万人の胃袋を満たすためには、食料と天然資源は輸入に頼らざるを得ません。食料の60%、石油と天然ガスはほぼ100%を輸入しています。それらを輸入するためには、外貨を稼いで支払う必要があります。

日本は工業大国だった

これまで、日本人は手先の器用さを活かして、精密・高性能な工業製品を作って、輸出して外貨を稼いできました。昔は、カメラはドイツが、時計はスイスが世界市場を席捲していました。日本はそうした国々を手本にして、工業立国となるべく懸命な努力を重ねて、1962年にはドイツを抜いてカメラ市場で世界一に、1980年にはスイスを抜いて時計市場で世界一になりました。その後、ディジタルカメラでも世界一になりました。さらにたゆまない努力を続けて、家電製品、半導体の分野でも世界をリードしてきました。

しかし、21世紀になってからは、世界の製造業は大きく変わりました。日本はそれまでの成功に甘んじていたため、新しい技術の開発への投資が他国に遅れをとり始めました。例えば、世界の液晶テレビ市場では、かつては日本のメーカ(シャープ、ソニー、パナソニックなど)が34%を占めてダントツでした。ところが近年では韓国と中国に奪われてしまっています(図1)。スマートフォンに至っては、中国メーカの寡占状態にあります(図2)。その他、半導体、鉄鋼、造船など日本のお家芸であった工業製品は、次々と浸食されつつあります。

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現在のところ、自動車は米国についで2位を保っていますが安心してはいられません。韓国、中国からの追い上げが激しくなっています。それに、日本の自動車メーカは、電気自動車、自動運転の技術では遅れをとっています。

産業形態の変遷

2017年の世界の国内総生産(GDP$80兆のうち、サービス産業(第三次産)が65%を占めています(図3)。さらに国ごとの内訳を見ると、GDPに占めるサービス産業の規模は、米国では77%、日本では69%を占めています(図4)。今日では、まさにサービス産業が世界経済をけん引しているのです。

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サービス産業とは、人々が静かな環境で知識と知恵を使って経済価値を産み出す仕事であり、知識産業とも呼ばれます。広大な耕地や大規模な工場施設を使って肉体労働によって、価値を作り出す農業や工業や製造業とは大きく異なるものです。

サービスを生み出すには、創造性とそれをビジネスとして実現するための情報技術(IT)が必要になります。小売業にしても観光業にしても、ITなしにはビジネスを円滑に遂行できません。何をどうやって仕入れて、どのように買い手に知らせて、いくらで売って、いくら儲かるか、などを前もってコンピュータとソフトウェアのツール(IT)を使って計画・分析する必要があります。

例えば、Amazonは世界の各地に大量のコンピュータを格納した大規模なデータセンタを運用しています。そこでは、世界中の商品、顧客、配送のための情報をコンピュータで処理しています。すなわちITを有効に駆使しています。それに加えて、コンピュータの処理機能を世界中の企業にクラウドサービス(*)として提供しています。Amazonの昨年の売上は、$2800億(約39兆円)でした。まさに、ITのなせる技です。

(*)ユーザが所有するコンピュータで行っていた情報処理を、データセンターからネットワーク経由で提供するサービス

IT分野のビジネスへの投資増大

米国のシリコンバレーには、新しいベンチャービジネスの成長を支援するために投資する、投資会社(ベンチャーキャピタル)がたくさん集まっています。このベンチャーキャピタルが、2019年にベンチャー企業に投資した総額は$414億(約4.5兆円)に上りました。そのうちインターネットとソフトウェア(すなわちIT)分野への投資は、全体の56%を占めました(図5)。ベンチャー投資会社が、IT分野をいかに有望視しているかお分かりになるでしょう。今やITビジネスこそが経済活動の中心であるからです。

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求むIT人材

ところが、日本ではITの仕事をする人材が非常に不足しています。米国と日本におけるITサービスの就業者数を図6に示します。米国ではこれまで順調に増えつつあり、2019年現在で435万人ですが、日本では微増であり104万人しかいません。

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日本よりも米国の方が人口が多いので、IT就業者数も多いのは当然です。では、仕事をしている全就業者のうち、ITに従事している人数の割合を計算してみましょう(表1)。米国では全産業の1億4687万人に対してITサービスは435.8万人であり、その比率は3%です(表1の水色の部分)。ところが日本はその半分の1.5%なのです(表1の桃色の部分)。米国も日本も同じように自由経済を営んでいるのに、ITサービス就業者の比率がこんなに異なるのはおかしいですね。このように、日本ではIT人材が絶対的に足りないのです。日本のIT会社ではいずこでも人が足りない、と叫ばれている所以(ゆえん)なのです。

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[表1 ITサービス業界の就業者数の日米比較]

さらに前述の調査によると、日本では現時点で20万人のIT人材が不足していると報告しています。米国でも100万人が不足していると叫ばれています。まさに、いずこもIT人材クライシスなのです。


コロナ・パンデミックによって、世界中でビジネスが滞り、多くの人が職を失いました。米国では4月末までの失業者数は2062万人に至って、失業率は14.7%に跳ね上がりました。主な業種別の失業者数を図7に示します。

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レジャー、ホスピタリティとは観光とホテル業であり、その業界の失業者は765万人。輸送・倉庫業の失業者58万人には、航空会社の14万人が含まれています。しかし、情報通信における失業者は僅少です。人手不足なので、不況にも強いということです。

SE求む

SEとは、ソフトウェア・エンジニアあるいはシステム・エンジニアのことです。すなわちITを使ってビジネスの計画・分析をする仕事人です。エンジニアといっても、油まみれで機械を製作したり、鉄骨の組立手順を作る、製造業や建設業の技術者とは大きく異なります。SEの仕事は、創造性を発揮して、新しいビジネスの仕組みを、コンピュータを使って立案・開発することです。弁護士や会計士などと同じように、知識ワーカなのです。

ITはクリーンなビジネス

いかなるビジネスを遂行するにも、電力が必要になります。発電するには燃料を燃やすので二酸化炭素(CO2)を排出します。国立研究開発法人 科学技術振興機構の調査とその他の調査データをもとに、それぞれの産業分野で直接および間接的に排出するCO2の量を計算して、描いたのが図8のグラフです。

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製造業がCO2を最も多く排出していることは、容易にうなずけます。一方、情報サービスはたったの60万トンであり、最もクリーンな産業なのです。

ITは稼ぎがいいビジネス

主要な産業が産み出しているGDPと、それに従事している就業者数を調べて表2にまとめました。

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[表2 主な産業のGDPと就業人口]
(2019年 内閣府・国民経済計算、総務省統計局・主な産業別就業者)



ここで、各産業における就業者ひとり当たりの金額(GDP÷就業人口)を計算してみると、図9のようになります。稼ぎが一番良いのは金融・保険、その次が情報通信です。

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SEの仕事は3K

かつて、SEの仕事は、きつい、厳しい、帰れない、などとその頭文字をとって「3K」の仕事だと揶揄されたことがありました。しかし、いまとなってはそれは違います。SEは泥や油まみれにならないで、落ち着いて静かな環境で仕事ができます。しかも地球にやさしい省エネで「きれい(Kirei)な」仕事です。頭を使う知的な作業なので「賢く(Kashiikoku)なる」仕事です。そして何よりも「稼ぎ(Kasegi)がいい」仕事なのです。すなわち「3K」の仕事なのです。これからの日本にとって最も重要な職業なのです。

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(山谷正己)

#3K#IT業界#SE

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