2021.3.17

技術動向2020➀

IoT(Internet of Things)

IoT(Internet of Things)

「IoT(Internet of Things)」 宇野陽一朗(SCSK(株) R&Dセンター)

情報サービス企業がデジタルビジネスに取り組むには、どのようなスキルや技術が求められるのか。
デジタルビジネスに関わるキーワードを取り上げて、有識者に寄稿していただいた。

※「DXビジネス全体像の可視化~情報サービス産業白書2020」掲載

1 本格的な活用が始まったIoT

1 IoT(Internet of Things)とは

様々なモノからネットワーク経由で情報を収集し、「モノのインターネット」と呼ばれているIoTは、位置情報や利用状況等の様々な事象も収集の対象となっており、モノだけのインターネットではなくなってきている。また、AI(Artificial Intelligence)と連携されることが多いことから「Intelligence of Things」とも呼ばれ始めている。

IoTシステムはモノからデータを取得するIoT、取得された膨大なデータを蓄積するビッグデータ、データを分析するAIの大きく三つの技術の組み合わせで構成される。このうち蓄積や分析、可視化等の共通する機能がまとめられた「IoTプラットフォーム」を、効率化や迅速なPoC(Proof of Concept)実施のために採用する事例が増えている。(図表1)

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【図表1:IoTの概要】

2 活用事例

GE(General Electric)の事例
航空機のエンジンの状況をリアルタイムでモニタリングし、障害状況等を解析することで、トラブルの発生箇所や、メンテナンスを必要とする箇所が目的地に着陸前に知ることができるようになった。交換部品の事前手配により、航空機運行の遅れの最小化を実現した。

コマツ(小松製作所)の事例
位置情報と建設機械から送付されるデータを用いて建機の位置や稼働状況を可視化し、建機の保守や建設作業の効率改善に活用した。現在は、作業場から取得したデータを活用した、建設作業の無人化実現に取り組んでいる。

Walmartの事例
食料品が農場から小売店の陳列棚へと移動する間の、製品の現在地や気温、その他の統計的数字を、移動の各段階でブロックチェーン台帳に保存して追跡した。途中で問題が発覚した場合は消費者に渡る前に対処可能とした。

3 見えてきた課題事項

IoTの活用が進むなかでIoT独自の課題が発生することが判明している。従来のサーバとPC間での課題に加え、下記IoT独自の課題も考慮する必要がある。

IoTにおけるセキュリティ問題
・データ取得場所に関わる問題
・リアルタイム処理が必要となる問題
・データ共有に関わる問題

2 IoTにおけるセキュリティ問題

IoTデバイスはサーバと違い非力であり、複雑な処理やセキュリティ対策プログラムが導入できない。しかし、人目につかない場所に設置されることも多く、悪意ある人間からの電子的、物理的な攻撃や盗難等のリスクにさらされることになる。運用・保守対応の困難さから、終了後に捨て置かれることもある。

このため、手元にあるPoC時、設置後手元を離れる運用時、破棄時および盗難時等、ライフサイクルの各段階におけるデバイスやデータの守り方を設計段階で考えておく必要がある。例えば図表2のような事項を検討する。

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【図表2:IoTのライフサイクル】

3 データ取得場所に関わる問題

IoTデバイスは劣悪な環境に設置されうるため、故障や事故の防止、電源の確保、適切な通信方式等検討する必要がある。また、国ごとの規制も留意する必要がある。その他、机上や疑似環境では予測不能な問題が多々潜んでいるため、フィールド試験が必須となる。

1 デバイスの故障対策

設置場所の状況によってはデバイスの故障や誤動作が発生しやすくなる。火災や死亡事故等甚大な被害を防ぐために検討が必要となる。(図表3

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図表3:デバイスの故障対策】

2 電源の確保

設置場所によっては電源仕様の違い等で電源が得られない可能性がある。期間が短ければバッテリーおよびその交換運用で対処可能だが、長期にわたる場合は消費電力の低減、電源の確保方法の検討が必要となる。(図表4

【図表4:電源検討事項】
検討対象 検討内容
プログラム 間欠動作、ループ処理時の外部呼び出し
デバイス 低消費電力のデバイス、LED等の無駄を省く
バッテリー 温度等の製品の制限内で活用
ネットワーク LPWA等低消費電力の通信方式を選択
エネルギーハーベスティング 太陽光や温度変化、無線電波での発電
3 通信方式の選択

IoT向けの通信はそのカバー範囲や機器コスト、消費電力量の観点から、必ずしもWiFiや携帯電話ネットワークが適しているとは限らない。低消費電力で遠距離まで通信可能だが低速であまりデータを送付できないLPWA(Low Power Wide Area)のような通信方式の採用も進んでおり、目的に適した方式の選択が求められる。(図表5)

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【図表5:通信方式と特徴】(資料:京セラコミュニケーションシステム「LPWAの優位性」をもとに編集)

4 法律の問題

IoTデバイスの利用にあたり、利用国ごとの法律や規制、認証等を順守する必要がある。現地で認証済デバイスを採用する、認証を得る等を考慮することになる。(図表6

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【図表6:遵守すべき法規制】

4 リアルタイム処理が必要となる問題

リアルタイム処理が求められる場合、データをクラウドに送付して結果を待つことはできない。そこで、データをデバイス側で解析してフィードバック可能であるエッジコンピューティングが採用されている。(図表7

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【図表7:エッジコンピューティング】

また、さらなるリアルタイム性の向上のために、特定処理に最適化したIoTデバイスの構築を可能とするシングルボードコンピュータ(SBC)が採用されている。(図表8

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【図表8:特定処理に特化したSBC】

5 データ共有に関わる問題

IoTは複数の技術分野にわたるため、他社と協力して問題を解決する「共創」の風潮が広まっている。他社との共創にあたり、データの共有、データの真正性の保証方法に関する標準化の検討が進行中である。(図表9

【図表9:データ共有手法の検討例】

分野

課題

対応内容

スマートシティ

IoTプラットフォーム間のデータ連携

国際標準のコンテキスト情報を付与

流通業

輸送中のデータが改善されていないことの証明

IoTデータをブロックチェーンに載せて真正性を確保

6 おわりに

IoTはデータ収集及び可視化の段階から、現実界へのフィードバック手法の検討段階にシフトしている。

例えば、物理界の様々なデータを収集して電子空間上に取得対象と常に状態が同期されたモノを作る、デジタルツインという手法がある。現実界では実施困難な様々な検証を電子空間上のモノに対して行い、製品づくりや経営判断に活かす手法である。

デジタルツインを活用した新たなサービス形態へのシフトが盛んな今日、IoTを有効的に活用する重要性は増している。先人の努力によりハードルが下がった今、本格的に取り組みだしても良い頃合いではないか。

#IoT#論文

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