2021.3.24

技術動向2020②

ブロックチェーン

ブロックチェーン

「ブロックチェーン」 北 洋二(SCSK(株) R&Dセンター)

情報サービス企業がデジタルビジネスに取り組むには、どのようなスキルや技術が求められるのか。
デジタルビジネスに関わるキーワードを取り上げて、有識者に寄稿していただいた。

※「DXビジネス全体像の可視化~情報サービス産業白書2020」掲載

1 ブロックチェーンの基本技術

ブロックチェーンとは、データを保管するための技術である。取引データは「トランザクション」と呼ばれ、トランザクションはまとめて「ブロック」という単位で管理される。各ブロックは「チェーン」状に連結する構造を取っており、前ブロックのハッシュ値をヘッダに含めることでブロックに関係性を持たせている(図表1)。ブロックチェーンの仕組みを実現するための基本技術を紹介する。

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【図表1:ブロックチェーンの構造】

1 安全な取引

公開鍵暗号方式とは、トランザクションの正当性を保障することで、信頼できない相手と取引するための技術である。所有者しか知らない秘密鍵と、秘密鍵から生成される公開鍵を取引に使用する。署名者は、秘密鍵を使って取引データを暗号化する。暗号化されたデータは、電子署名と呼ばれる。

取引相手は、公開鍵を使って電子署名から取引データを復元化する。復元データと取引データが一致を確認することで、秘密鍵を持つ取引相手が署名したことを検証できる。

2 データの保証

複数のブロックが同時に生成されたり、ブロックが改ざんされたりした場合、どちらのブロックを正とするかを判断する必要がある。判断する基準はコンセンサス・アルゴリズムと呼ばれる。ブロックチェーンのネットワークに参加する者はアルゴリズムに従って正しいブロックを選択することで、全員が同じデータを共有できる。アルゴリズムの種類としては以下の通りである。

Proof of Work (PoW)とは、より高い計算コストを消費したチェーンが正しいとするアルゴリズムである。ブロック生成時にハッシュ値を計算する必要があり、その計算処理には大量の電力が必要となる。データの改ざんには膨大な計算コストが必要となるため、改ざんを困難にしている。

Proof of Stake (PoS)とは、通貨の保有量をベースに次のブロック作成者を決めるアルゴリズムである。ブロックの作成者は、PoWでは早い者勝ちだが、PoSでは通貨の保有量により決定される。計算コストは通貨量によって調整されるので、PoWの課題であった「計算処理には大量の電力が必要であること」、「全体の51%を超える電力を保有すれば不正行為が可能であること」、「計算処理に時間がかかること」を解決できる。

Delegated Proof of Stake (DPoS)とは、PoSの派生したアルゴリズムである。コインの保有量の割合に応じて投票権が割り当てられ、投票によって次のブロック作成者を決める。投票制度を取ることで、大量通貨保有者がブロック承認者となる偏りを防止している。

3 個人間の通信

P2P(Peer to Peer)とは、ネットワーク参加者間で直接通信するための技術である。例えばクレジットカードを使った取引は銀行などの仲介者を経由した決済であるため手数料が発生する。P2P上で相手と直接取引すれば仲介者が不要となり、少額での取引が可能となる。

P2Pネットワークに参加している端末をノードと呼ぶ。P2Pとして、全てのノードが対等な「ピュアP2P型」と、インデックス情報をサーバで管理する「ハイブリッドP2P型」に分類される。

ビットコインやEthereumなど不特定多数の人が参加するブロックチェーンは、ピュアP2P型である。サーバが存在しないため、障害耐性やスケーラビリティが高いが、メッセージ伝送経路が複雑化するデメリットがある。

Hyperledger Fabric (Fabric)など参加者が限定されるブロックチェーンは、ハイブリッドP2P型である。管理用のサーバが存在するため、検索経路が単純化されて管理が容易となるが、サーバ障害や負荷によるスケーラビリティ低下のデメリットがある。

4 契約の自動化

スマート・コントラクトとは、契約をプログラムにより自動化することで、コストの削減や契約不履行のリスクを解消する技術である。所有権や資産などの契約をデジタル化することで、ブロックチェーン上で通貨以外の価値の移転が可能となった。

2 ブロックチェーンの拡張技術

ブロックチェーンを使いやすくするために、機能拡張するための技術がある。処理速度の改善を目的とした拡張技術を紹介する。

1 ブロックチェーンの外側での取引

オフチェーンとは、ブロックチェーンの外側で取引を行うための技術である。最初と最後の取引をブロックチェーン上に記録し、途中で発生する取引はチェーンの外側で取引することで、処理速度の向上や手数料を削減する効果がある。

代表的なオフチェーンとして、ビットコインのLightning Networkや、EthereumRaiden Networkがある。相手が不正を行っていないかをオンラインで監視する必要があるため、利用には技術的な知識が必要となる。(図表2

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【図表2:代表的なブロックチェーン】

2 複数ブロックチェーン間での取引

サイドチェーンとは、複数のブロックチェーン間で取引するための技術である。「メインとなるブロックチェーン(メインチェーン)」の処理やデータを「別のブロックチェーン(サイドチェーン)」へ連携することで、並列処理による処理速度の向上、処理の連携による機能拡張、データの秘匿化などのメリットがある。

代表的なサイドチェーンとして、ビットコインのLiquid Networkや、EthereumPlasmaがある。サイドチェーンの通貨を保有する者は、自分の通貨が不正使用されていないかを監視する必要があるため、監視する手間や時間、データ量が問題となる。

3 ブロックの並列処理

シャーディングとは、トランザクションを並列処理するための分散処理技術である。ビットコインやEthereumは、全てのノードが全トランザクションを処理するため処理速度の問題があった。ノードをシャードという複数のグループに分割し、それぞれのグループに割り当てられたトランザクションを並列処理することで、処理速度の向上が可能となる。Ethereumは、次期アップデートでシャーディングの導入が計画されており、1,000倍以上の性能改善が期待されている。

3 ブロックチェーンの利用形態による分類

暗号通貨だけでも数千種類存在し、今後も増加が見込まれる。ブロックチェーンの利用形態による分類を紹介する。

1 適用分野による分類

Blockchain1.0
暗号通貨の送金を目的としたものは1.0に分類される。ビットコインは最初のブロックチェーンであり、他の暗号通貨はビットコインをベースに拡張されていった。

Blockchain 2.0
通貨以外の価値の移転を目的としたものは2.0に分類される。Ethereumは所有権や資産などの契約をデジタル化するスマート・コントラクトを最初に実装した。

Blockchain 3.0
特定用途への特化を目的としたものは3.0に分類される。IoT用途向けのIOTAは、高速で手数料がかからない決済を可能とした。

2 運用形態による分類

運用形態による分類として、パブリック型とコンソーシアム型が定義される。

パブリック型
管理者が存在せず、自由に参加できるブロックチェーン。数千から数万ノードで構成されており、ノード数が多いほど処理が分散化されて、改ざん耐性は高くなる。

コンソーシアム型
管理者として会社や組織が運営し、ネットワーク参加は許可制のブロックチェーン。数ノードから数十ノードで構成されており、ノード数が少ないほど処理は集中化されて、処理速度は速くなる。

4 事例

ブロックチェーンは決済の手段として金融分野で多く使われてきたが、製造や流通など他分野での活用が進んでいる。金融以外の事例を紹介する。

1 不動産所有権細分化「RealT」

不動産の所有権を細分化し、複数人が所有者となることで、低額での不動産投資ができるサービス。Ethereumで取引を行うことで、不動産業者を介さずに所有権を売買できる。

2 貿易プラットフォーム「TradeLens」

輸出者、輸入者、銀行、保険会社などが管理してきたデータを共有化させ、契約を自動化するプラットフォーム。Fabric上でデータを管理することで、契約書などの紙媒体を電子化させ、業務効率化やコストを削減できる。

3 駐車料金精算の自動化「carVertical」

自動車に端末を取り付けて、GPSとアプリから自動で駐車料金を決済できるサービス。IOTAを利用して通行料や充電などの決済や、運転データの提供によりブロックチェーン上で報酬を得ることができる。

5 ブロックチェーンの課題

ブロックチェーンには解決されていない課題があり、常に新しい技術や方式が検討されている。主な課題を紹介する。

1 処理速度の課題

ブロックに格納できるトランザクション量には上限があるため、処理速度の課題がある。オフチェーンやサイドチェーンによるトランザクション処理量の削減、ブロックに格納できるサイズの拡張、トランザクションのサイズ縮小、などの対策が挙げられる。

また、ブロックを生成する間隔は決められているため、ブロック生成時間の課題がある。コンセンサス・アルゴリズムの変更、シャーディングによるブロック生成間隔の短縮、などの対策が挙げられる。

2 データプライバシーの課題

ブロックのデータは基本的に公開されるため、データプライバシーの課題がある。ゼロ知識証明、特定ノードでのみデータを保持するアクセス制御、などの対策が挙げられる。

3 ストレージの課題

大きなファイルを扱うためには、全てのノードが大きなストレージを用意しなければならない課題がある。ブロックチェーンの技術をストレージに応用した分散型ストレージと呼ばれる技術がある。分散型ストレージ上でファイルを管理し、ブロックチェーンにはファイルのハッシュ値を記録してストレージ連携する、などの対策が挙げられる。

6 まとめ

ブロックチェーンは、改ざんが困難であり、同じデータを持つことが保証されているため、複数の企業間で情報連携する仕組みとして注目されている。先進的な北米やヨーロッパでは社会実装は進んでおり、日本でもいろいろな企業でPoCProof of Concept)が行われているため、今後急速に活用が進んでいくだろう。

#ブロックチェーン#論文

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